Way of Life

心を豊かにする衣食住

大田由香梨

今でこそわたしたちの生活の中に当たり前に存在する「サスティナブル」という概念が、まだ世の中に根付いていない10年前からヴィーガンカフェを経営し、衣食住をスタイリングするライフスタイリストとして、持続可能で本当に豊かな暮らしとはなにかを人々に伝え続けている大田由香梨さん。その活動は多岐に渡りながらも、現在は都会と自然の間を行き来するライフスタイルを送る大田さんに、今日は東京のご自宅でお話を伺うことができました。

大田さんの暮らしについてお伺いさせてください。

私は22歳の時からファッションスタイリストとしてのキャリアをスタートしました。ファッション誌や、アーティスト、テレビなどの衣装を扱うお仕事を経て、現在はより深い思考を求め、ブランドのスタイリストとして、ブランディングのサポートをするお仕事をメインとしています。

その他にも、スタイリストの枠を超えて、2011年からヴィーガンカフェをオープンし、『LOVEG』という大豆ミートのブランドを通して食の大切さを伝えたり、最近ではサステナブルをコンセプトにした公園のプロデュースや、スタジオをデザインから運用、旅のプロデュースなど空間や体験をスタイリングするお仕事も増えてきました。

LIFESTYLIST』という自身の精神性をプロダクト化した取り組みなど、いろいろな経営経験を通して学んだことを活かしながら、衣食住のスタイリストとしてもお仕事をさせていただいております。

一見バラバラに見えると思うのですが、全てに共通するのは、ファッションで培ったデザインの組み立て方や、発信、流れを読む力を活かし、「持続可能な次なるライフスタイル」を実現することにフォーカスしています。

M_もその活動の一つで、MOUSSYの長年アートディレクターを担当させていただきました。そのMOUSSYが、これからの時代を歩む上で、持続可能でより多くの人を幸せにすることのできるファッションブランドを目指すことが必要と感じ、この『M_』のブランド立ち上げから、スタイリストとして、そしてアートディレクターとしてサポートをさせていただいています。

日本の女性なら誰もが知っているMOUSSYだからこそ、M_の存在意義はとても大きいと感じています。
いつかは、きっと全てのブランドに、M_の理念が当たり前のように浸透する日が来る思うのですが、その時まで。

ブランドの理念と、私自身の生きる喜びが重なっているので、関わらせていただき、心から感謝しています。

House

現在住んでいるところはどこですか?住んでいる理由や、その場所にした理由などを教えてください。

現在は、東京と千葉の二拠点で暮らしています。

東京では、築60年近いヴィンテージマンションに住んでいます。フランスの建築家が設計したと聞いていて、天井やテラス、キッチンもお気に入りです。目の前には、きっとこの家と同じ時間を生きてきたであろう、大きな八重桜の木があり、毎日様々な鳥がここに来て遊んでいるのを眺めるのが、至福の時間です。

千葉では、エアストリームというアメリカ製のモーターハウスに住んでいます。いつか大人になったらそんな場所を持ちたいというのが夢だったので、2年半くらい前から準備をしてきました。

衣食住がコンパクトなエアストリームには本当に大切なものだけ。
数日滞在の衣服をトランク一個に詰め込んで、大好きな香り、大切な本、PCがあればそれだけで良い。あとは大切な家族と仲間がいたら最高に幸せ!
時間の豊かさを知ることができたのは、本当に価値のあることでした。
エアストリームの前に、大きなテーブルと椅子があるので、晴れた日はそこが仕事場にもなるし、食卓にもなります。朝起きたら、近くの砂浜で朝日を迎え、コーヒーを飲み1日が始まる。
東京と千葉を行き来する暮らしは、私に多くの気づきと、豊かな時間を与えてくれています。

Fashion

あなたが今Fashionに対して感じていることを教えていただけますか?

私にとってファッションは、自分自身そのものです。
母が洋服を作る仕事をしていたので、子供の頃から、服が作られる過程をいつも見ていました。今考えるとスタイリストになったことも必然でした。

なりたい自分を想像し、新たな服を迎え入れ、季節や心境の変化と共に自然と選ぶ衣服が変わり、着ることで自信になる服や、癒される服もある。

そういう『心』の揺らぎ、『自身の成長』と共に、私自身を作り出すのがファッションが持つ力であり、魅力だと感じています。
これからのファッションは、その人の人生に寄り添った、ブランドの歴史に寄り添った未来をつくるスタイリストとして在りたいと思っています。

これから、Fashionのトレンドや、衣服の役割はどの様に変化していくと思いますか?

私の世代は、109ブームや、ファストファッションブームなど、一過性のトレンド、かつ低価格な服が世の中に溢れた時代でもありました。

私自身、そういった流れの早い時代と共に歩んだことで、気の流れや、社会が作り出すムード、熱狂のようなものを、実際に肌で感じることができたことは大きな学びだったと思います。
雑誌やテレビの出演者、ショッピングモールに来ている人、街中を歩いている人々のファッションを見ているだけで、今の社会の感情みたいなものを感じることができます。

一言で言い表すことのできない奥深いものではありますが、ファッションは、この世界を変える大きなエネルギー(力)を持っていると思います。
M_のような理念のブランドを愛する人が増えることで、もっと世界が美しく輝き出すと信じています。

Food

食事についてお聞かせください。 食事について気を使っていること、心掛けていることはありますか?

2011年から『ORGANIC TABLE BY LAPAZ』という飲食店を経営を始めたことで、食に対する理解が深まり、考え方が大きく変わりました。

日々様々なメディアでエンターテイメントとして発信される「食」。写真映えする食事、時短の調理法、早い、大量、安い、かわいい…。
本当に、「食」に対して、この表現だけで良いのかと時々不安になります。

“食べることは生きること”
人は死んだものを食べません。野菜も、お肉も全て、生き生きとした生命力が溢れた瞬間を頂く。
だからこそ、もっともっと食を丁寧に伝えていきたいと、感じています。

日本での食の未来はどの様になっていくと思いますか?

ここ数年、国内の旅をすることが増えたことで、日本の国土の豊かさを改めて知ることとなりました。
「食」が生み出される場所は、私たちが住むこの地球の大地と海。
私たちの「食」に対する意識が代わり、知識が深まることで、結果的に土壌環境や、河川の水質、海の環境や地球の循環システムすべてがバランス良く機能できる日が来ると信じています。
日本が誇るべき未来は、水の美しさ、自然の豊かさ、食材の豊富さだと感じています。
この素晴らしい大地と共に育まれた「食文化」をしっかりと循環し持続させていきたいと願っています。

そして、とっても根本的なことなのですが、昔よりも料理もするようになり、家で食事をすることが増えました。
仲間や家族とみんなで過ごす「食事」の時間の大切さを改めて感じています。
千葉の家は周りが田畑と水田なので、農家さんから直接お野菜をいただくことができます。
大切なひとと共に、手間暇をかけて作られたお料理やお酒をありがたく頂き。
一枚一枚に想いの込められた器に食材を盛り付けみんなで食す。
一つ一つ丁寧にモノコトを意識することで豊かな時間となります。
今の私にとって、とても大切な時間です。

Past / Present / Future

この数年間で、自分の意識、関心はどの様に変化していきましたか?

ここ数年で、環境問題や持続可能社会という言葉をよく耳にするようになりました。
ヴィーガンのカフェを経営していたこともあり、比較的早くから、その意識があったと思います。

でも、問題に対する解決では、ある一部分の一時的な対処でしかありません。
対処療法だけでは、根本的な解決にはならないのは、人の健康も地球の健康も同じ。
なので、問題にフォーカスするのではなく、今は、地球の根本を知り、地球の一部として、長く続く暮らしの在り方に関心があります。

そして、自分自身の生き方、在り方、暮らし方。日々の選択。
家族との時間を改めて大切に考えるタイミングでもあります。

今、興味のあること、今準備をしていることはありますか?

今、私は千葉の暮らしの中で、一軒の古民家を修繕しています。
約200年前に建てられた、とっても長い時間軸で存在する家と向き合う中で、江戸時代の方々と一緒にモノづくりをしている感覚に触れて胸が熱くなります。そして、長い年月の中で、この家を守り続けてきた方々の思いと共に、これからの暮らしを考える瞬間もあります。

そんな日々に、とても感動しています。その感覚をたくさんの人とシェアしていきたいと思い、プライベートでワークショップのイベントを開催して多くの人と一緒に家づくりをしています。いずれは、ORGANIC TABLE BY LAPAZの次なる進化の場所として、衣食住を通して心身を整えるためのリトリート施設のような場にしたいと思っています。

そして私自身が「今」関わるお仕事も暮らしも、この古民家のように在りたいなと感じています。
200年後も人々を感動させられる仕事と生き方をしていきたいです。

Style

Tops KNIT BRA
Skirt KNIT TIGHT SKIRT

私にとってM_は、日常の心を豊かにしてくれる衣服であり、自分自身の心の表現でもあります。
オーガニックコットンの服を着ることは、生産者の健康や、生産地の土壌や水の枯渇を守ることにも繋がります。
リサイクルポリエステルの服を着ることで、プラスチック=ゴミではなく、しっかりとした資源としての価値のあるものなのだと伝えていくことで、きっと簡単に捨てる人がいなくなるのではないかなと思ったり。

衣服には、作り手の願いや思いが込められているので、表層的なデザインだけではなく、作り手の想い、語ることがあることが、ものづくりのあるべき姿と思います。
M_の取り組みを、もっと多くの方に知っていただき、たくさんの方に100年後も愛されるブランドとなる事を願っております!

Yukari Ota

大田 由香梨

Creative director / Lifestylist
ファッション、FOOD、住空間など、人の営みに必要な衣食住をスタイリングする「ライフスタイリスト」として活動。
株式会社スリーピングトーキョー取締役。2021年からは、東京と千葉県九十九里でのデュアルライフをスタートし、企業·ブランドへのクリエイティブや、公共プロジェクトを通して、サステナブル(持続可能)で美しい未来の循環型のライフスタイルを提案している。

Website http://yukari-ota.com/
Instagram https://instagram.com/otayukari