Way of Life

想像力が道を開く

高瀬真奈

モデルとして幅広い媒体で活躍しながらも、環境問題をはじめとする社会問題に高い関心を持ち、モデルという枠にとらわれず、地元山梨の甲府大使として地方創生に関わるプロジェクトに積極的に活動している高瀬真奈さん。SDGsにネイティブな感性を持ち、自ら動画の編集やデザインなどもこなす、マルチな一面も持つ彼女の発信からは、心から地元を愛する純粋な気持ちが伝わってきます。そんな高瀬さんにとって大切な場所である山梨県甲府で、今日は衣食住について今思うことをお話し下さいました。

高瀬さんの暮らしについてお伺いさせてください。

山梨から18歳のときに上京し、モデルとしてお仕事をさせていただいて6年目になります。

普段は、ビューティーやウェディング誌、ファッションブランドのルックのモデルをさせて頂くことが多いです。モデル業と並行して、山梨県の甲府大使を務めていたり、株式会社シグナルさんのecono-meというプロジェクトの中で「エコをおしゃれに」をテーマにSDGsに関連したものづくりのプロデュースもさせて頂いています。

モデルとして活動しながら自身のSNSやYoutubeでコンテンツというよりは、純粋にシェアしたい一心で山梨県のおすすめのスポットや好きなところを紹介していたところ、2022年の春に甲府大使としての活動をしてみないかとお誘い頂きました。

わたしの母校は甲府商業高校という学校で、マーケティングや商品企画のアイデアを考えたり、そしてそれをプレゼンしたり、他にはプログラミングだったりと物作りに関わるような勉強ができる学校でした。実際に、甲府市を活性化させるために何をしたらいいかという問いかけは常に授業の中であったので、自然とSDGsに絡むことは昔から学んでいたんです。

econo-meさんからものづくりのお話を頂いたとき、これをわたし一人でやるよりは、わたしよりもさらにネイティブな感覚を持っている母校の生徒たちと、共通する想いをもった団体さんや企業を絡めたら、面白いことが起きそうだなと思ってスタートし、月になんども山梨に足を運び、高校生とディスカッションを重ねて形になったプロジェクトです。

甲府大使として肩書きをいただいたことによってプロモーションに徹底でき、役目が分かりやすくなり私自身の甲府への想いが伝わりやすくなったことで、人との出会いに恵まれ、何かをしたいと思った時に、頭の中で思い描いていたことが実現に至るようになりました。

地元のために活動することはわたしの夢だったので、甲府の地方創生への取り組みであったり、持続可能な循環のしくみを作るために私にできることは何か、日々向き合いながら活動をさせて頂いています。

House

現在住んでいるところはどこですか?住んでいる理由や、その場所にした理由などを教えてください。

東京都に住んでいます。

山梨での活動がありつつも東京に住む理由として、わたしにとって東京は自分のモデル業が始まった地であって、ここを起点にしてさまざまな価値観を得るようになった大切な場所。ふらっと歩いているだけでも視覚的にも影響を受けるし、人と話すことでもインスピレーションがもらえる場所だからです。新しいものが生まれる場所にいることで、そこから影響を受けて、自分がやりたいことに落とし込んでいける場所だと思うので、東京がすごく好きです。

今住んでいる場所は、商店街があって、昔からのお店も新しいお店も共存していて、古い建物をリノベーションしたお店があったり、若い人もお年寄りまでいろんな世代が共生している街。

例えば、若い人たちがやっている新しい飲食店に、若者だけではなくておじいちゃんおばあちゃんも通っていたり、地域性がしっかりと存在していることを感じる場所です。

新しいものが出来たときに、世代間の価値観の違いで、その場所を利用する人が分かれてしまうのってすごくもったいないなと思っていて、広い世代が通って、その中で新しい出会いがあって。そんな場所が憧れで、自分もいつか作れたらいいなと思っているのも、今この街に住んでいる理由のひとつです。

やっぱりずっと山梨にいたら、地元を大切にしたいという感覚って今ほど無かったと思うんです。出てきたからこそ、新しい視野を持てたり、地元に対して何か還元したいという気持ちがより強くなりました。

Fashion

あなたが今 Fashionに対して感じていることを教えていただけますか?

ファッションは、自己表現というよりは自己理解をするためのものに近いなと考えています。

欲しいものができた時に簡単に買うんじゃなくて、「わたしはなぜそれがほしいのか?」と自分と向き合って熟孝した結果、やっぱり欲しいって思うってことは、わたしはこういう人間なんだなって自分が本心で求めていることが分かる。これはファッションだけではなくて、他のどんなことにも言えると思います。

自分を理解するという上では、心もそうですが、体を知るということも大事だなと思っています。
わたしは、自分の体に合うもの・骨格に合うものを選ぶためには、全身鏡が大事だなと思っていて、洋服を着終わってからチェックするというより、鏡をみながら着替えています。
下着姿でも自分の体をみて、自分のニュートラルを知っておくことで、服を重ねていく行為の段階を見つめながら着替えると、自分の体のパーツの中で、出ている方が綺麗に見えたのに隠れちゃってもったいないなとか気づいたりするんです。そうすることで、自分のことも知れて、似合うものを選べるようになると思います。

ファッションは今、とても難しい時代にあると感じています。環境のことを考え出すと、新しいものを買うことやファッションとの向き合い方に悩んだ時期もありましたが、今は自分を見つめて熟孝すること、長く大切にできる自分に似合うものを選ぶことでバランスをとって楽しんでいます。

これから、Fashionのトレンドや、衣服の役割はどの様に変化していくと思いますか?

衣服の役割は、トレンドに振り回されずに、自分の中に根拠を持つためのツールになっていくと思っています。
なんとなく良いな、という段階で終わりではなくて、なんでわたしはそれを良いと思うのかを見つめていくと、本当に好きなものがわかってくる。
みんなが本当の意味で心で求めているものを選び、それを身につけることで自然と個性が出てくるというのがファッションだとわたしは思っています。

Food

食事について気を使っていること、心掛けていることはありますか?

とにかくシンプルなものを摂るように心がけています。添加物は気にしているので、成分表示は必ず見ますね。

また、最近は生産者さんが分かるものを買ったり、減農薬や無農薬に拘らず、どういった想いがあって育てられた野菜なんだろうとか、ストーリーを知って手に取ることが多いです。山梨に帰った時に、農家さんと近い売り場で購入したり、親にお願いして送ってもらったりもしています。

母が家庭菜園で育てた採れたての新鮮な野菜をよく送ってくれていて、わたし自身も自分で野菜を育てるという生活に憧れがあり、まずはベランダ菜園から始めてみたいなと思ってるところです。

日本での食に対するこれからの未来はどの様になっていくと思いますか?

問題はたくさんある中で大事なことは、まずは知ることだと思っています。
今は多くの情報に日常的に触れていると思うのですが、実際は受け取った情報だけでしか判断できてないという部分があるんじゃないかと感じていて…。

例えば、食料自給率の低さの問題が、どうして起こっているのか、それはどんな流れで起きているのか、農家さんは実際本当に減っているのか、どこから野菜がきて、どういう形で出荷されていて、余っている部分はどこで、逆に足りない部分はどこなんだろうって。そういう源流を、個人個人が調べて知ってくことが必要なんじゃないかって。

大きな部分を見すぎてしまうと、どうしたらいいんだろう、自分には何かできるんだろうか、と漠然としたプレッシャーになってしまったり、苦しくなってしまう方も実際多いんじゃないかって思うんです。わたしもそれが負荷になっていたときがあって、自分にも周りにも厳しい考え方になってしまって…。だんだんと自分がすごく排他的で嫌な人間になってしまっていることに気がついて。

そこから、善悪という極端な物差しではなく、みんながそれぞれの生活にあったものや大切にしたいことを軸に選んでいくことが正解なんじゃないかって思うようになりました。

だから、まずは問題を知って、自分と家族というような身近な輪から物事を見てみること。出来ることから始めることがいい循環を作り、だんだんとその輪を広げていくことに繋がると思っています。

Past / Present / Future

この数年間で、自分の意識、関心はどの様に変化していきましたか?

パンデミック下で行動の制限や、これまでの当たり前ができなくなる辛い状況をみんなが同じように体験するという経験をしたことは、私自身のマインドを大きく変えました。

自分だけのことだけじゃなくて、周りの人のために、自分がやるべきことはなんだろうと考えるようになりました。でも、それは決して無理をしてすることではなくて、自分が既に持っている物で、人に与えられるものや喜んでもらえることってなんだろう?って。

コロナ禍に入る前は上京して間もない期間だったというのもあり、自分のことしか考える余裕がなかったような気がしていて、今になって思うと視野が狭かったなと感じるのですが、あの時の時間が、現在のモデルとしての表現や、甲府大使としての活動や、地方創生に関わるお仕事に生かされるような気づきを与えてくれるきっかけだったと思います。

今、興味のあること、今準備をしていることはありますか?

今は、「空間」や「街づくり」に興味があります。きっかけは大分の別府を訪れたときに『山田別荘』という宿に泊まったことでした。

山田別荘は、昭和初期からある元々別荘として使われていた歴史の長い建物をリノベーションされている旅館で、昔からの建物の良さを活かしながら、流れる音楽がローファイヒップホップだったり、現代のものが置かれているけれど、それがとても調和していて、昔の景色に溶け込む空間作りを感じたんです。

わたしはそこにいるだけで、なぜだかとても心が落ち着いて、癒されたんですよね。

これって、地元に帰った時の感覚に近くて、そこの空気を吸っただけで「あーリラックスできるなー」とか、ただここにいるだけで幸せになれるよねっていう感覚と一緒だと気づいて、空間が人に与える影響について気になり始めました。

econo-me』との母校の高校生たちとものづくりをするプロジェクトで、日常でもマルチに使えるクロスを作ったのですが、アウトドアではピクニックシートだったり、そこに広げて敷くことで、それだけでもひとつの空間を作ってくれて、気分のスイッチを切り替えてくれるアイテムになればいいなと思っています。

このクロスはナチュラルダイで、ワインパミス(葡萄の搾りかす)で染めているのですが、山梨の中だけでも年間数万トンという単位で廃棄されていて、水分もしっかりとあるものなので、それを燃やすこと自体にエネルギー負荷がかかっていること分かりました。授業の中で、母校の生徒が調べてくれプレゼンをしてくれた中のひとつで、ワインパミスで染めるというところに辿りつきました。

この他には、トウモロコシやサトウキビ搾汁のデンプンが原料の生分解性のタンブラー、さまざまな布の端材で形成されているオーガニックコットンのカットソー、1948年に創立された国産の最高級帆布生地ブランド富士金梅®の国産帆布(キャンバス)を使用した Made in Japanのトートーバッグの4つのアイテムを作りました。ロゴになっている”imagination paves the way”は「想像力が道を開く」という意味で、わたしのポリシーでロゴも自分でデザインしました。

このアイテムたちを作ったことで、マルシェを開催したり、人と人とを繋いでいくことで、実はまちづくりのための地域の活性化に繋がっているのを感じていて、これから学びを深めていきたいと思っています。

これから、私たちの暮らしはどの様に変化・進化していくと思いますか?

これから、みんながみんな、本当にやりたいことをそれぞれやっていく時代になっていくと思っています。

世の中に情報が溢れている中で、表面的なことも多くあるなと感じていて、その中でみんなが本質を求めるようになってきたんじゃないかって思っています。

全て社会問題に繋がると思いますが、ジェンダー・働き方・暮らし方において、一般的な常識とされているものがありつつも、わたしはこう思うから、こう行動する、という選択をする時代。

そして想いやストーリーに共感が生まれて、コミュニティが作られていく気がしています。

Style

Dress SEETHROUGH CAMI DRESS
Dress RIB KNIT DRESS

今回選ばせていただいた中で印象に残っているスタイルは、ケープコートとニットのセットアップのコーディネートで、撮影場所の甲州夢小路もレトロな雰囲気のある場所なので、そんな街のムードに合わせてロング丈のブーツを合わせて少し昔のバランス感にしてみました。いままでミニスカートはあまり選んで来なかったのですが、秋冬は新鮮なアイテムも挑戦して楽しんでみたいと思っています。

M_は生産背景やデザイン含めて、時代感をしっかり捉えたブランドさんだなと思います。

何かを買う時に、こういう理念を持っているブランドと知って、だから買いたいという順番は、意識を強く持っている人はそうされている方もいると思いますが、一番理想なのは、かわいい!素敵!と思ってみなさんが好きで手に取るものが、社会問題や地球環境に配慮されたものだっていうのが一番嬉しい形なんじゃないかなと、自分自身もSDGsに関連する活動をする中で感じています。

そして、MOUSSYというブランドが始まった当時からのお客さんの世代にも着てもらえるラインとしても存在していることに、持続可能性を感じました。

Mana Takase

高瀬真奈

1999年生まれ、山梨県甲府市出身。
凛とした透明感あふれるヴィジュアルが業界内外で注目を集め、雑誌や広告を中心に幅広く活躍。
環境問題や動物愛護といった社会問題への意識も高く、地元・山梨の地方創生などモデルの枠に留まらない活動にも自発的に参加。2022年4月より甲府大使に就任。近年はTV出演や新聞等での露出も増え、ますます影響力も高まっている。
陶芸やカメラ、DIYを趣味とするクリエイティブな一面も。YouTubeやInstagramといった自身のSNSを活用し、積極的に発信を行っている。

Instagram https://www.instagram.com/manatakase_/
Luuna Management https://luuna-management.com/model/mana-takase

Web Store