Way of Life
Akemi Yamamoto
様々な暮らしを選択することができる時代。『時短』や『簡単』という言葉を多く目にする一方、少し忘れかけていた「丁寧な暮らし」という6文字に、日本人らしい美しさがあるような気がします。様々な人の暮らし方、生き方のヒントを伝えていく学校の学長をしながら、葉山の古民家で、自然のリズムに合わせながら暮らす山本朱美さんに、今日はご自宅でお話をお伺いしました。
株式会社マザーアースの代表として、日本人のルーツとも言える禅哲学をコンセプトに、植物のエネルギーと香りの力で自分自身を整えるプロダクトブランド「ZEN」を展開しています。また、主人が設立した (株)アップサイクルジャパンの事業のひとつとして、大人の学び場であるアップサイクル大学を立ち上げ、現在は学長をしています。
(株)アップサイクルジャパンは、消費しながらごみを減らす持続可能な選択肢や、不要な物にワンランク上の価値を与える「アップサイクル」という概念を啓蒙する企業ですが、アップサイクル大学は、まさに自分をアップデートする場所。ジャンルは特定せず、環境問題や社会問題、政治・経済、ジェンダーや農業など様々なトピックを学べる場で、常識を覆してくれる個性豊かな講師をお招きし、人生が豊かになる本質的な学び場を作っています。
ZENは、ベクトルを自分の内側に向けるコンセプトのブランド。自分自身が整ってなければ他人にも優しくなれませんしね。アップサイクル大学は、自分の頭で多角的に物事を考える目を養って、異なる価値観を受け入れる心を創造する場所。全く違う種の事業に見えますが、どちらも自分の寛容性を広げて人生を豊かに生きるきっかけとなるプロジェクトなのです。
House
現在住んでいるところ、その場所にした理由などを教えてください。
現在は、葉山に住んでいます。
30歳のころ、働き詰めだったライフスタイルに終止符を打ち、バリキャリが当たり前だった人生に一石を投じるつもりで湘南へ引っ越しました。
当時は鵠沼海岸や茅ヶ崎に住んでおりましたが、サーフカルチャーが強い若者の街でして(笑)歳を重ねて行くうちに静かな暮らしを望むようになった私には、合ってないのかも・・・と感じておりました。
そんな時に現在住んでいる葉山の古民家と出会って、思い切って引っ越しを決めました。
葉山暮らしでは、まるで楽園とも言える里山のフィールドを畑として貸して頂き、お野菜やハーブはできる限り自分自身で育ててみたり、鶏を飼ってみたり、養蜂をしたり、プチ自給自足にチャレンジしています。
Fashion
あなたが今 Fashionに対して感じていることを教えていただけますか?
育った街は東京で、通っていた学校も勤務地も東京。10年前までは都内勤務で、その時はピンヒールしか履いたことがないような人間でした。今では本当に考えられません(笑)
常に戦闘モードでしたから、自分を着飾ることが第一優先。心地いいことよりどれほどスタイリッシュに見えるか?他人の目線を優先して、洋服を選んでいました。
今は真逆で、自分にとって心地いいかどうかで全ての物事を選択するように変化し、誰かのためではなく自分のために洋服を選ぶようになりました。
これから、Fashionはどのように変化していくと思いますか?
私自身は、トレンドを追いかけるよりも、環境を意識しているブランドを選んだり、環境活動に力を入れているブランドの服を身に纏うことが心地いいと思い始めています。
流行のファッションを安価で手に入れられるファストファッションは、大量生産・大量廃棄によって地球環境に大きな負担を与えています。共感価値の時代がやってくると感じているので、今後は、小さくても作り手の思いやストーリーを大切にしているブランドが愛される時代がやってくると思います。
Food
食事について気を使っていること、心掛けていることはありますか?
葉山に住むようになり、食に対する意識もガラリと変わりました。
畑を始めて自分でお野菜を作るようになったことで、地球にとっても人間にとっても土が大切であると分かってからは、土壌環境が整った場所で育つお野菜を求めるようになりました。
土壌の環境が整った場所とは?どうやって分かるの?と思うかもしれませんませんが、農家さんを直接訪れて、農法や哲学を伺うようにした上で作物をお譲り頂いています。時に遠い地域より取り寄せることも。
そんなお野菜は、どれほど高くても価値があると思っていて、そして、どれほど高くても価値あるお野菜を作ってくださってる農家さんの応援だと思って購入させて頂きます。
土に触れるようになり、無農薬・有機栽培・自然栽培のお野菜づくりがどれほど大変なことかを身をもって経験したからこそ、日本の食を支える職業の方々を心から尊敬しています。その中でも、人間の健康だけでなく地球に思いを寄せてお野菜づくりをされてる方々に出会うと心が震えますね。
調味料もできる限り自分で作るようになりました。自分で作れば使用する素材を選べますから安心ですし、家族にも安全な食事を提供することができます。以前の自分の生活だったら考えられないですね。
こんな風に変わったきっかけの全ては、畑を始めたことだと思います。
口にするものを変えれば毎日の食生活を通じて「地球に優しく」することができるのです。
Past / Present / Future
この数年間で、自分の意識、関心はどの様に変化していきましたか?
今までの人生は仕事を中心として生きて来ました。例えば「あれをしなきゃ」などと、「must(~しなければならない)」の価値観で1日が終わってしまって(笑)そういう日々の出来事に追われ続ける生活でなく、「want(~したい)」の要素を大切にするようになりましたね。だって自分の人生なんだから、自分の「want(~したい)」を大切にしてあげなければ生きてる意味がない!何かに追われるのではなく、“暮らす”や“生きる”ことをして行きたい。自然と共存し生きることがイコール環境活動になるような、地球に負荷をかけない暮らしを強く望むようになりました。
今、興味のあること、今準備をしていることはありますか?
自然豊かな葉山の生活は、山も海も味わえて大好きですが、もう少しダイナミックな自然を感じられる場所に拠点を移す準備をしています。特に山が深く水が美しく豊富な場所を望んでいます。これから新たなフィールドへ拠点を移して、今よりもさらに農的な暮らしを実践することが目標です。個人的には里山のようなフィールドに住み、お野菜だけでなく様々なハーブと大豆を大量に育てたいですね!お米も育ててみたいです。
これから、私たちの暮らしはどの様に変化、進化していくのでしょうか?また理想の未来などがあれば、教えていただけますか?
私自身、物質社会に限界を感じており、可能な限り日々の暮らしの中で豊かさを見い出して行きたいと思っています。比較対象のない唯一無二の豊かさと、外的要因に左右されない自分軸の幸せを見つけることができれば、世界から争いごとがなくなるはずです。自分を整えることに集中すると、口にするものに気をつけ、心地よさを求めてナチュラルな暮らしを選択するようになり、土の仕組みを勉強し、雑草や昆虫、微生物たちが自然界のシステムを支えてくれていることを学ぶ。すると生きとし生けるものが愛おしくなり、気がつくと小さな生命体に思いやりを持って接するようになります。
人間は自然に対して謙虚でなければならず、私達以外の住処を荒らしていい権利なんてないと思うんです。もし人間が他の生命体に比べて知性が高いのであれば、その知性を破壊ではなく創造に使ってあげる。隣に居てくれる人や足元の自然など、目の前の存在に丁寧に向き合うことで世界中に優しい循環が起こることを信じているので、まずは、そのような人にわたしがなりたいと思っています。
Style
オーガニックコットンや、テンセルであったり、環境配慮された素材に拘って起用していると聞いた時に、肌に触れたときにきっと心地いいだろうなと思って、このスタイリングを選ばせて頂きました。
そして、実際に着てみても、とても着心地が良かったです。
ファッションはみんなが興味のあることですし環境問題にアプローチしやすいですよね。
だからこそ、デザイン性も、心地よさも兼ね備えていて、地球にもやさしいモノづくりをしている、M_のようなブランドをきっかけに、ファッションを通して多くの人たちに意識の変革が起こると思っています。
Akemi Yamamoto
山本朱美
(株)MotherEarth代表 東京から葉山の山奥に移住し、地球に寄り添うサステナブルな暮らしを送る。無農薬・有機栽培の野菜やハーブを育て、半自給自足に挑戦。2020年より庭先養鶏をスタートし、12羽の鶏を育てながら動物福祉について熟慮。自ら育てたハーブを蒸留しアロマ調香スタイリストとして香りのプロデュースも行う。現在は、香りとウェルネスのブランド「ZEN」を展開する傍ら、アップサイクルジャパンが運営するアップサイクル大学の学長も努める。
Instagram https://instagram.com/akemism
ZEN https://zenearthmade.shop/
アップサイクル大学 https://www.instagram.com/upcycle.jp_univ/